六塚光公式ブログ


by crax_alexey

カレランよりカレルレンの方がしっくりくるという話

 京都で読書会。

 今回のお題は「幼年期の終わり」(アーサー・C・クラーク、光文社文庫)。
 新訳古典文庫のシリーズで最近出たこの版は、一章だけが新たに書き直されている。東西冷戦の終結を踏まえて、物語の始まりを三十年ほどずらしたとのこと。もっとも、その他の部分はまったく手を入れていないらしいので、一部齟齬が生じているところもある。世界の人口が二十五億だったのっていつの時代の話かなあ。

 十年くらい前にハヤカワ文庫版で読んでいるはずなのだが、内容をオチ以外何もかも忘れていたのでビックリしますね。特に第一部のテロリスト集団とか「こんな奴ら出てきたっけ」と首を捻ることしきり。前に持ってたやつと見比べればいいんだが、多分実家に送り返しているので不可能。

 全三部構成だが、一部二部、オーバーロードが地球にやってきて支配を行うくだりはユートピア小説的である。今読むと、ユートピアっぷりがいかにも大時代的ではある。人類がこうも従容として外来者に従うとは思えないけどね。テロリストの皆さんとか紳士的すぎるし。911を体験した今となっては、これはちょっとないわって感じだ。まあ、レジスタンス活動の描写に力点を入れたら話の主眼がブレまくるであろうので、これでいいのだろうとは思うけど。

 しかし三部で子供達が人類以外の何かに目覚めると、すごい勢いで地球が滅ぶ全滅エンドとなる。やっぱり宇宙は無情じゃなくちゃいかんよねー。一部二部との対比でカタルシスを感じた――というのは、あまりに個人的な感想ですかね。

 物語の端々に、強烈なイメージを植え付けられるシーンがたくさんある。宇宙船が空を覆うシーンなどはその後様々な映像作品で繰り返し使われる情景であるし、二部三部のわけのわからんイメージの奔流もなかなかいい。あと、うつろな目をした子供達がひたすらマスゲームを続けるところとか。このへんは SFでありながら詩的でもあるよなあと思う。

 しかしオーバーマインドってのは絶対無二の存在なんですかね。個人的には種の強さというのは多様性にこそあると思っているので、全てが一つになってしまったらあとは衰退するだけなんじゃね、と考えたりするのだが。

 結論としては、古典には長く読み継がれるだけの然るべき理由がある、という一般論になる。今更いうことでもないが、面白かった。
 あとこの版、字がでかくて読みやすいのでいいね。
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by crax_alexey | 2008-06-08 15:49 | 読書