六塚光公式ブログ


by crax_alexey

ベナレスへの道に道連れはいらないという話

「カリブ諸島の手がかり」(T・S・ストリブリング、河出文庫)読了。

 国書刊行会の世界推理小説全集の一冊が文庫落ちした物。
 ポジオリ教授が休暇年度に訪れたカリブの五つの島における五つの事件を描いた短編集である。カリブ諸島とひとまとめにいっても、一九二〇年代にはそれぞれの島が欧米列強各国によって分割支配されており、それぞれに宗主国が異なる。宗主国が違えば文化も違う、ということで各短編ともそれぞれ独特の雰囲気を醸し出している。この設定は面白いなあ。

 探偵役のポジオリ教授もなかなかに面白い。直感でもって事件捜査にあたり、おおむね事件を解決するのだが、大事なところでポカをやらかし事件の要点を取り逃す。しかし外見上事件は解決しているため、教授の名探偵としての名声は上がっていく、というのが基本的なスタイルであり、バークリーのロジャー・シェリンガム氏を思い起こすことこの上ない。明らかにシェリンガムの系列にいる探偵である。創造された時期はほぼ同時だと思うが。

 名探偵であると同時にボンクラである教授は、ボンクラであるが故に最後の短編「ベナレスへの道」でドえらい目に遭う。こんなオチありかよ! いくら教授がボンクラだからってこんなひどい仕打ちはねえ、と思った。面白すぎる。まさかシリーズキャラクターにこんなことするとはなあ。

 面白かった。少々ビーンボール気味ではあるが。しかしこの全集は他にもビーンボールがあるのでさほど気にはならない。「赤い右手」とか「編集室の床に落ちた顔」とか。編集部はこの種の作品をどこから拾ってくるんだろうね?


「量子真空」(アレステア・レナルズ、早川文庫SF)読了。

 1000P超の大作「啓示空間」の直接の続編。今度は1200Pだ!
 その分厚さ故、新幹線の行き帰りでやっと読み切れるだろう、と算段していたのだが、あまりに読みやすいのでついうっかり実家にいる間に読み終わってしまった。前作同様驚きの読みやすさだ。なんでなんだろう? この種の作品にしてはキャラクター描写が多いせいなのか。

 時代は前作から60年。インヒビターの人類抹殺大作戦はすんでの所でシルベステの自爆によって止められた――はずだったのだが、またもや動き始めました! インヒビターを抑止できるであろう唯一の存在「隠匿兵器」を巡って各勢力が相争う、というのがだいたいのあらすじ。

 面白い。のだが、「俺達の戦いはこれからだ!」的な終わり方なので続きが気になりすぎる。頼むから続きを出してくれと言いたい。とりあえず短編集と「カズムシティ」も読まねばなるまいよ。
[PR]
by crax_alexey | 2008-08-22 21:03 | 読書